top of page
  • 弘之 林

古いアパートの相続って難しい?

親御さんが高齢になってくると、会社員であれば中堅社員として活躍する世代の方が多いでしょう。部下をマネジメントする立場にある方もいるかもしれません。そんな世代の間では、親の相続について友人同士で話題に上ることが増え、「古いアパートの相続は難しい」といった話を耳にすることもあるでしょう。こうした話が出る背景には、たとえ古いアパートであっても、それが一つの経営であり、これまで経験したことのない課題に直面するからだと考えられます。

では、古いアパートの相続が難しいと言われる理由は何でしょうか?問題になりやすい原因を大きく5つに分けて見ていきましょう。


①法定相続人が複数いるとトラブルが起こりやすい


相続において、法定相続人が複数いる場合、不動産の相続は特に揉めやすいと言われています。これは、不動産は現金のように簡単に分割できないためです。

アパートを相続する際には、以下のような方法があります


・現物分割

アパートを相続人の一人が取得し、他の相続人には現金を分配する方法です。しかし、この方法は不平等になりやすいです。


・代償分割

アパートを相続した人が、他の相続人に対して現金を支払う方法です。アパート経営に積極的な相続人がいる場合に適しています。


・換価分割

アパートを売却し、その売却金を現金で分ける方法です。この方法では金銭的に平等に分けることができます。


・共有分割

アパートを相続人全員で共有し、共同で経営していく方法です。ただし、これは後々トラブルに発展しやすいです。


いずれの方法を選んだとしても、相続人全員の同意や納得を得ることは簡単ではありません。たとえそれが親族間の話し合いであっても、問題が生じることが多いのです。


②築浅アパートに比べて負担が大きい


次に、相続税の問題があります。相続税の計算では、アパートの稼働率(入居率)が大きな影響を与えます。相続税評価額から、稼働率に基づいた金額を引くことができるため、空室が多いほど税負担が増えることになります。古いアパートは築年数が経っている分、入居者が付きやすい築浅のアパートと比較すると、どうしても不利になりがちです。


③借入金の残額が経営を圧迫する


入居率の低いアパートは、老朽化が進んでいることが多く、修繕が必要な箇所も増えてきます。そのため、修繕費がかさみ、古いアパートの運営には多くの資金が必要になります。また、新築時や大規模修繕時、入居者の入れ替え時など、さまざまな場面で費用が発生し、融資を受けることも少なくありません。このように、借入金の残額が経営を圧迫するケースが多く、相続時にはその返済の見通しが立つかどうかが大きな課題となります。


④不動産売却が難しい


古いアパートの多くは、すでに法定耐用年数を過ぎています。買い手にとって、投資用不動産の購入時は通常、現金よりもローンを利用し、少ない自己資金にレバレッジをかけて収益を上げようとします。しかし、耐用年数を過ぎた物件は融資が難しくなるため、購入を敬遠されがちです。また、入居者が残っている場合、建て替えや土地の利用目的の変更が難しくなることもあります。さらに、立ち退いてもらうには立ち退き料などの追加コストが発生します。

加えて、修繕やリノベーションによってアパートの賃貸寿命がどれだけ延ばせるのか、立ち退きを進める場合にはどのくらいの費用がかかるのか、そして、その費用に対して回収の見込みが立つのかといった点が厳しくチェックされます。これらの要因から、古いアパートは不動産として売却しづらいという問題が生じます。


⑤古いアパートでも不動産経営は難しい


たとえ法定相続人間で揉めたとしても、アパートの運営は止まることはありません。遺産分割協議の最中であっても、入居者から賃料を回収し、関係者への精算を続ける必要があります。しかし、トラブルが発生した場合や、原状回復などの手配や支出の管理は誰が行うのでしょうか?借金の返済はどうするのでしょうか?協議が終わるまで、アパートは共有状態で資金を自由に動かすこともできず、その間、入居者や関係者にも多大な影響を与えることになります。

さらに、たとえ相続人同士が折り合いをつけて運営を続けることができたとしても、「売却が難しい」「立ち退きをお願いするのは気が引ける」といった理由で安易にアパート経営を続けるのは非常にリスクが高いです。古いアパートであっても、不動産経営は決して簡単ではないからです。


まとめ

古いアパートの相続には、さまざまな難題が伴います。まず、法定相続人が複数いる場合、不動産を公平に分割するのが難しく、トラブルが起こりやすいです。また、築浅アパートに比べて相続税の負担が大きく、経営における借入金の残額が経営を圧迫する要因にもなります。さらに、法定耐用年数を過ぎたアパートは売却が難しく、入居者が残っている場合にはさらなる制約が生じます。これらの問題が解決されるまで、アパートの運営は続けなければならず、不動産経営の難しさが一層浮き彫りになります。

古いアパートを相続する際には、これらのリスクを十分に理解し、慎重に対策を講じることが重要です。問題を未然に防ぐためにも、早い段階で専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

閲覧数:0回0件のコメント

Comments


bottom of page